番組タイトル曲を作った民放テレビの長寿番組が、本年3月で終了になりました。25年前の1999年4月からの開始に伴い、前年の暮頃にテーマ曲制作の依頼がありました。
自分の数ある作品の中でも、特に音楽理論とは真逆な部分を詰め込んだ珍しい作品になり、それが良かったのか、多くの方々の記憶に浸透する音楽になって行きました。
26年前の1998年12月。制作当初はAタイプ、Bタイプ、そしてCタイプの3曲を、比較用としてプロデューサーさんや関係者の皆さんにチョイスして頂きました。
意見は割れ、どのタイプも良いということになったのですが、なかなかまとまらず。
結局、大部分はAとBタイプ、そして、おまけ的に作った、いわば捨て駒的な比較用作品のCタイプが、その後、よもや視聴者に強烈なイメージを与えることになるなどとは、想像もしていなかったのです。
つまり視聴者に浸透させたのが、歌とスキャトを入れた、聴き比べ用の捨て駒的作品のこのCタイプ。
オーダーは、この3タイプ全てをミックスした作品を作るように依頼されたのです。
局の社運をかけた作品なんだと、今は亡き、有能な女性プロデューサーさんから言われ、初回の放送中に視聴者さんから、音楽についてのコメントがFAXで寄せられる確信と自信はあるかと聞かれたのです。
僕は、3パターンミックスの上、捨て駒の歌入りC タイプを入れた、まるで寄せ鍋料理のような作品を制作したことが初めてだったので、正直、とても不安ではありました。
4月の放送開始日、担当したベテランのアナウンサーさんのキャラと力量により、放送開始前から番宣の効果もあり、一気に話題になりました。もちろん、プロデューサーさんから言われたように、放送中に何通ものFAXが視聴者さんから寄せられ、安堵感から胸を撫で下ろした覚えがあります。
1999年の3月。放送一月前。3パターン連結と歌の収録の時のこと。
シンガーさんから「楽典上は、この部分の音は下げるべきではないの?」と質問されました。記譜はしてるが、記譜通りに歌うと、くだらないフレーズ。つまりこれは表現であり、音楽の理論では考えず、言葉。音楽の概念は捨てるようにと言ったら、シンガーさんは何度も何度も歌い直し、結果、見事に表現してくれたのです。現在でも全国番組や地方番組でも、このタイトルの中の強烈な表現は他には無いはずです。まるで登録商標のようになってしまったのでしょうね。
楽典の常識の真逆を考えた、面白い作品になりました。その上、ポリリズムではなく、それぞれの楽器が様々なジャンルのリズムを奏でる、面白い結果が生まれたのです。
タイトル音楽は、音楽というよりも、「表現」という言葉。全体を見渡すことが出来るようなることを、この時、僕自身、深く悟ったことです。
その後、この夕方の帯番組は、地方番組と言えど、驚異的な視聴率をずっと上げていくお化け番組になって行きました。
当初、曲の冒頭にアメリカ人のミュージシャン(当時、本職はニュヨークの警察関係者)のタイトルコールの声を入れ、Cタイプの曲がスタートし、ポリリズムなどではない多ジャンルの楽器とリズムによるA.Bパターンに続く、面白い作品になったのです。別物3タイプをミックスした偶然の賜物でした。
ところが、とある問題が起きたのです。
後にも先にも、これまでの経験上、聞いたこともない理由からでした。
放送が10年以上続いていた頃でした。
この続きは、また〜
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●1994年に導入したマッキントッシュLC630 これで膨大な数の作品を制作しました。まだAタイプ、Bタイプ、Cタイプの楽曲データが残っています。
ところがこのMAC。ノントラブルにて今も稼働中。
同業の音楽家が言うには「ゼロ戦だね」まあ、性能が良過ぎて、他のPCはG5、Windows11は録音としてDAWを動かすだけ。